Home> 学生の手紙

学生の手紙

  • 2007年1月 9日 23:20

今日、丁寧な毛筆書きの封書が届きました。見ると、10年以上前の卒業生の名前。。。この数年来、いつも気になっていたT君からでした。
T君は、大学卒業後に、ある犯罪に関わり、犯人グループの一人として逮捕されました。その経緯は、長くなるので割愛しますが、とにかく、裁判の末、刑が確定。6年の禁固刑という、かなり重い判決でした。実行犯ではないのだけれど、通訳としてかなり重要な役割を担ったというのがその判決の理由でした。その後、どこに収監されたかわからないまま、折に触れ思い出し、気になっていた彼からの手紙が、私の机の上にのっていたのです。
 来日時は高校卒業直後でまだ十代の少年だったT君。はにかんだような笑顔が可愛い真面目で優しい男の子でしたが、子どもっぽい顔つきに似合わないほどの筆の達人で、ほれぼれするような字を書いて私たちを唸らせていました。学校での出席は良く、とにかく勤勉で、卒業後は4年生の大学に進み、大学生活も順調に送っていた彼の歯車が狂い始めたのは就職につまづいた頃からだったようです。卒業後も時々顔を出してくれたのですが、勤めたという旅行会社がどうもあまりまともじゃなかったらしく、来るたびにやせて、服装も彼らしくないヤサグレた感じになっていたので心配し始めた矢先に起きた事件でした。
6年の刑だったのですが、たぶん、真面目に務めたのでしょう。5年間で釈放され、帰国する、という報告とお詫びの内容でした。返事をしようにも、彼の家族も事件を恥じて転居したため、日本を離れた彼に連絡する術はありません。裁判に何度か足を運んで以来、一度も面会に行けなかったことが悔やまれます。そのお詫びの意味も込め、彼から貰った手紙をここに紹介します。犯罪に関わっても、こんな風に手紙をくれた元留学生のことを知ってもらいたいと思うからです。

(以下、原文通り)
拝啓
 新春の候、先生は元気でお正月を過ごしでしょうか。僕は先月仮釈放となり、中国へ帰ることができました。先生に電話で報告しようと思いましたが、どう話したらいいのかわからなくて、先生にも○○さん(保証人の名前)にも、そして学校にも、大変な迷惑をかけたこと、本当に申し訳ありませんでした。先生はじめ皆んなに許してもらえるとは思いませんでした。でもだまって帰るわけにはいきません。先生がこんな僕に心配してくださったこと、心から感謝しています。
時は本当に早いものです。気をつけば、もう五年も過ぎていました。五年の歳月、たくさん大切なものをなくしましたが、自分自身にとって反省の時間であり、考える時間であり、そして勉強の時間でもありました。すべてがマイナスとは思いませんでした。どちらの意味でも僕にとって大切な時間でした。これからは正しい道を歩み、一瞬一瞬大切に生きていきたいと思っています。失敗を乗り越えられる人間になれるように頑張っていきたいと思っています。
中国へ帰ったら何をしようかはまだわかりません。今の僕にとって外の世界はあまりにも知らなさすぎです。でもしばらく両親と過ごすことに決めました。お旧正月の前に帰ることができて本当にうれしいです。やっと、両親に喜ばすことができました。
先生がこの手紙を読んでいる時、僕はもう中国に帰っているかもしれません。
先生もくれぐれもご自愛くださいますよう。今まで本当にありがとうございました。  敬具
山本弘子先生                                                                                                      T.J

Index of all entries

Home> 学生の手紙

カテゴリ
アーカイブ
購読

Return to page top